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レタッチ・データ 写真テクニック

写真のカラーマネジメントについての基礎知識と方法について解説

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写真のカラーマネジメントのお話

撮影した写真を納品する際に問題になりやすいのが色です。実際の撮影物と写真の色が違うと、クライアントからの色修正の指示が戻ってきたりします。

色かぶりや色ズレはホワイトバランスの設定ミスなどの初歩的なお話から始まり、機種の違いによる特定の色ズレなどまで、その原因は多岐にわたるため、写真の色合わせはなかなか厄介で、写真に関わる多くの人が頭を悩ます問題でもあります。

僕は仕事の関係から、この問題を解決するために、試行錯誤したことがありましたが、結局のところは「完全に対応するのは難しい」という結論になり、ほどほどに対応するというのがベストという結論になりました。

もう15年以上昔の話なので、現況とはことなる部分もありますが、ともあれ、写真のカラーマネジメントに頭を悩ますカメラマンの方々の参考にはなるかなと思うので、当時どのようにして写真のカラーマネジメントを試みたのかについてまとめてみました。

実物と写真の色が合わない

実物と写真の色が合わない

カメラマンが撮影したデータをクライアントに納品すると「実物の色とデータの色が違う」というような指摘をうけたりします。そのままでは使えないので、クライアントからカメラマンに「もう少し実際に近い色にしてください」などの指示が戻ってきたりするのです。

最近の例だと、一般的なデスクトップパソコンの液晶モニターが明るくなったせいか「やたらと暗い写真が納品される」などの話を聞いたりします。

カメラマンはカメラマンで「実物の色に近いんだけどなぁ」「適正な明るさなんだけどなぁ」などと思いながらも、クライアントからの指示なので、余分に鮮やかにしたり、明度を上げてみたりして再納品をするわけです。

クライアントはそれを会社のパソコンで見て「やっぱり色が違う」「何度指摘しても正しい色で上がってこない」などと思いながら、再度色補正の指示を出す。こんなやりとりをしながら、お互いが手探り状態で色を調整して、なんとか合格ラインの色に仕上げるなんてことがよくありました。

このような問題が、写真の世界ではよく起こります。その問題をなるべく少なくしようとするのがカラーマネジメントと呼ばれる設定だったり作業だったりするわけです。

しかし、いくらカメラマンが意識高くカラーマネジメントの環境を揃えたとしても、クライアントから「色が違う」と言われれば「そんなはずはないのになぁ」と思いながらも色補正をするしかありません。

写真の色が実物と違って見える問題を解決するためにしたこと

写真の色と実物の色が違って見える原因

写真の色と実物の色が違ってしまう原因はいろいろありますが、まず、基本的なところで、カメラマン、クライアントで写真を確認する環境が異なっているというのが最初の問題です。

なのでまず「お互いの環境を揃える」というところからカラーマネジメントは始まりました。

実物と写真を確認する環境をカメラマンとクライアント間で揃える

環境を整えると言っても簡単ではありません。というのも、お互いが写真を確認する環境に差異がないように、お互いが実物と写真を確認する環境をできるだけ同じにしていく必要があるのです。

実物とデータの色が異なっていないかを確認して調整するのに一番手っ取り早いのは、クライアントに立ち会ってもらって、同じ場所で、同じ物と画面を確認しながら目の前で色を合わせていくという方法になります。

カメラマンとクライアントが同じものを見ながら調整すれば、少なくともその環境での色合わせでは、カメラマンとクライアントとの合致が得られるわけです。

しかしながら、毎回立ち会って貰うというわけにはいかないので、お互いの環境でも、似たような状況を作り出すために「実物と写真を確認する環境をなるべく同じにしましょう」ということになったのです。

要するに、確認する環境を同じにすることで、擬似的に同じ場所で同じものを見て調整するのと近いような状況にするというわけです。

モニターを揃える

まずは写真を確認するモニターを揃えることになりました。
モニターの世界もピンキリで、ただ画面に情報が映れば良いというものから、写真などの業界のためにカラーマネジメントができるモニターまで幅広くあります。

カメラマンなどであれば、カラーマネジメントできるモニターを使用していることも多いと思いますが、事務ワークをメインにしているクライアント側で、わざわざカラーマネジメントできるような高価なモニターを使用しているなんてことはまずありません。

またカラーマネジメントできるモニターはいろいろなメーカーから出されていたりもしますが、カメラなどと同じ様にモニターもメーカーが違うと違って見えることもあるので、同じメーカーの製品を使用するというのが基本になるかと思います。

厳密に言えば同じメーカーの同じモデルを使用したとしても個体差も出てしまうので完璧に合わせることはそれでも難しいと思われますが、現実的な範囲で「同じメーカーの同じモデルでカラーマネジメントできるモニターを選ぶ」ということができればかなり前進することになります。

カラーマネジメントできるモニターは、EIZOのColorEdgeシリーズなどが代表的で業界でも使っている人が多いと思います。

モニターの環境を合わせる

モニターが同じでもモニターの設定が異なっていると全く違った色に見えてしまうため、モニターの環境も揃える必要があります。

例えばEIZOであれば、ColorNavigatorというソフトがあり、用途に応じた基本的なカラー設定や、業務用向けにも対応したカラーキャリブレーションができるようになっています。

参考 ColorNavigator|EIZO (ページ下部)

そして、より完璧なカラーマネジメントができるようにキャリブレーションセンサーを使用して色を合わせる必要があります。

参考 キャリブレーションセンサー

さらには、モニターの性質上どうしても使用していくと経時変化で色がズレてしまうので、定期的なカラーキャリブレーションが必要になります。1ヶ月に一度程度の作業ではありますが、結構、煩わしい作業なんですよねぇ。

モニターの壁紙はニュートラルグレーにする

モニターの壁紙

ここまでやったとしても、まだまだ問題は続きます。
例えば、モニターの壁紙も色を確認するのに影響を及ぼします。なので自分勝手に好きな壁紙を使用して良いというわけではなく、ニュートラルグレーなど、視覚に影響を与えないような壁紙を選択する必要があります。

照明を合わせる(演色AAA昼白色)

まだまだ問題は続きます。
せっかくモニターの環境を合わせても、実際の物を確認する際に違って見えないように、色を確認する場所の照明を揃える必要があります。

見えている色は環境の光に影響をされるので、蛍光灯の青白い光で見ているのか、電球色の赤い光りで見ているのかで、同じものを見ても違った色に見えてしまうので、同じ性質の光に揃える必要があるのです。

正しい色が確認できる光りとしてよく言われる「演色性の高い」照明が必要になるのです。

演色性の説明については長くなってしまうので下記のリンクあたりを参考にしていただければ良いと思いますが、要するに人は昔から太陽の光の下で物を見るのが自然なので、色を見る時の光は日中の太陽の光りの色が基本になります。要するに演色性の高い照明とは、日中の太陽の下で確認したときと似たような見え方をする光の出る照明というわけです。

参考 演色性とは|コニカミノルタ

電球色や、普通の蛍光灯などでは赤みが強くなったり、青みがかったりして、同じ色でも違う色に見えてしまうので、正確な色を見るためには、演色AAA昼白色の条件を満たした蛍光灯などを使用することになります。

演色AAA昼白色の蛍光灯などは一般的な蛍光灯よりも価格も高くなるのでオフィス全部の蛍光灯を交換するとなると大変な金額になります。そこでクライアントには画像確認用の個室を用意してもらい、そこだけを演色AAA昼白色の蛍光灯に交換してもらうことになりました。

外部環境も整える

さらに問題を解決しようとすると、外部からの光の影響を受けないように窓を塞いでしまうとか、遮光フードを使用したり、壁の色もニュートラルグレーにするとか、色が散らないように着ている服も無彩色にするとか、こだわればどこまでも突き詰める要素があるわけですが、それを自分の環境だけでなく、クライアント側にもお願いするのは非現実的なところになり、このあたりに関しては既に「できる範囲で」というような妥協を余儀なくされはじめます。

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画像確認のためのソフトを統一する

写真を確認するために使用するソフトも統一する必要があります。

例えば、写真関係のソフトで業界標準と言えばPhotoshopですが、Photoshopで作成した画像を別のソフト(Macのプレビューなど)で確認すると、設定次第では色が違って見える場合があります。

また、同じソフトであってもバージョンが異なると違って見えることもあります。レイヤーを含む画像の場合はソフトのバージョンによって、効果が異なる場合もあるので、バージョンが異なる環境での確認は注意が必要だったりします。

対応の限界

上記のような感じで、カメラマン側とクライアント側で設備を整え、出来る範囲で環境を整えてカラーマネージメントに取り組みをしてみたわけですが、どうしようもならない問題も次から次へと出てくるので限界を感じるようになってきます。

担当者によって感覚が違う

特定の担当者とやりとりしていれば比較的安定した評価ができるようになってきますが、担当者が複数居る場合には話が違ってきます。

色の感覚は人によって違っているものなので、同じ写真を確認したとしても担当者によって指示の内容が異なってくるわけです。せっかく環境を合わせても、担当者によって左右されてしまっては何の意味もありません。

全てのクライアントに対応できない

当然ながらこのような環境を作るには、クライアントの協力も必要です。実際問題でここまで徹底した環境作りができたのは、クライアントからの強い要望があったからこそで、こちらの都合だけでは絶対に対応してくれないでしょう。

環境を揃えたクライアントとのやりとりに関してはある程度スムーズに色調整ができるようになったとしても、他のクライアントの間には問題が残されたまままになります。

数値は嘘をつかない デジタルでの補正

数値は嘘をつかない

しばらく運用した結果として、いろいろ対策をしたとしても上記のような問題もあり、本当に上手く機能しているのかどうかが怪しく感じるようになってきました。

「もう少し赤が欲しい」「全体に青みがかっているように見える」など、感覚に頼るとどうしても個人差が出てきてしまい、環境を整えたとしても結局は手探りの色調整をすることになってしまいます。

結果、最も確実な対応策として指標を定めるというところに落ち着いていきます。

例えば一連の撮影の前にグレースケールを撮影しておいて、白、中間色、黒のそれぞれの数値を見て色かぶり具合を確認して補正レイヤー作成します。この補正レイヤーを各写真に適用することで、少なくともその撮影での色かぶりによる大幅な色ズレは回避できるようになります。

色かぶりを判断するにはRGBの値を見ます。色かぶりがなければRGBの値は綺麗に同じになるか、近似値になります。

カラーライブラリ

特定の色のズレに関してはPANトーンなどの指定色が分かっていればカラーライブラリから色を指定してもらって、画像にその色を重ね合わせて、近い色になるようにその色だけを調整するなどで、感覚に頼らずにデジタルの情報を基に調整することができます。

このように数値などを指標にすれば、例え青みがかったモニターで見てもRGBの数値を確認することで色かぶりが無いように補正することができますし、クライアントにも色かぶりが無いことや、期待した色になっていることの説明が出来るようになります。

カラーマネジメント環境を整えることのメリット

結局の所、担当者次第、作業者の感覚次第、数値を見ればある程度調整できるという考え方になると、カラーマネジメントが本当に必要のか?という疑問も湧くところではありますが、個人的にはやはりカラーマネジメントは必要だと思っています。

というのも、全く手探りで作業をするよりは、カラーマネジメントできる環境で作業したデータを納品できるようにしておけば「色が違う」と言われた時にも「環境によって見え方が違う。こちらはカラーマネジメントに対応している」というような仕事としての説得力を持たせることができますし、根拠を持って「正しい色で納品している」と言うこともできるようになります。

少なくとも自分の環境のせいで色が変になってしまっているのに気が付かずに納品してしまうというようなことや、とんちんかんな色補正で納品するというような事故はなくなると思います。

WEB媒体がメインになってカラーマネジメントが必要性が薄まりつつある

上記のような感じでカラーマネジメントに対していろいろ試行錯誤していたのが、かれこれ15年以上前のお話。

当時はまだ最終出力先が、チラシやカタログなどの紙媒体というのがメインの時代でした。なので「最終納品物=紙媒体で印刷されるもの」というゴールがあったため、出力されたものが実物と違わないように色かぶりや色ズレのない写真にする必要があったわけです。

しかし時代は変わり、広告やカタログも紙媒体よりもWEBやデジタルの方がメインになり、スクリーンを通して見ることの方が増えてきました。上述したように閲覧環境が変われば色はいくらでも変わって見えるため、どんなに正しく色合わせをしたとしても、閲覧する人の環境で違う色に見えてしまいますし、それらを制御することもできません。

ネットショップが増え始めた当初は「購入した物が思ってた色と違う」というようなクレームも多かったと記憶しています。当時はその原因がよく分からず「写真の色は正しいはずなのになぁ」などと思われたりもしていたものです。

結局は閲覧環境で色が大きく違うので、そのうち「ご覧になる環境(PCのモニタやスマートフォンの画面)などにより、色合いが異なって見える場合があります。」というようなクレーム避けの一文が加えられるようになり、デジタルでは色が違って見えるのが当たり前という認識になってきました。

もう、商品写真は実物に忠実な色でなくてはいけないものから、多少であれば色が違っていても許されるものになってきたと言えるかもしれません。

そんなわけで、厳密に色を合わせたとしても最終出力先がWEBなどのデジタル媒体だったりすると、結局色が違って見えるので厳密に色を合わせることがそれほど重要ではなくなってしまい、以前よりはカラーマネジメントに関して厳密さを求められる場面が少なくなってきたように思います。

また、カメラやモニターも当時と比べて性能が良くなっていることもあり、明度をいじるくらいでそれなりに見られる写真が撮れるようになっているので、以前ほどカラーマネジメントにこだわらなくても良いようになっているというのもあるかなと思います。

今ではむしろ、実物と多少違ってても良いので綺麗に見えることの方が重要視されるようになっているような感じですね。むしろカラーマネージメント自体も、綺麗に見えるようにするために必要なものになっているかもしれません。

そんなわけで、昔の感覚でカラーマネージメントを口にすると、既に時代遅れになってしまっている感じがしないでもないですが、カラーマネジメントがきちんと出来た方が納品物としても安定しますし、きちんとした写真を納品しているという自身にもなると思います。また個人的に紙出力するような場面があるような時には役立つ知識でもあるので、ある程度は知識を身に着けておいた方が良いのかなと思います。

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