水平に360度回転できる機能(パンニング)が付いた雲台についての初歩的な疑問です。
多くの雲台には、ボトム部分にパンニング機能が備わっていて、カメラを水平に360度回転させることができるようになっています。パンニングは非常に便利な機能なので雲台に必須とも言える機能です。
さて、このパンニング機能ですが、ボトム部分だけではなく、カメラを取り付けクランプ部分にも備わっている雲台があります。
「どうしてボトム部分にパンニング機能が備わっているにも関わらず、クランプ部分にも備わった雲台が存在するのか?」「同じパンニング機能が一つの雲台でボトム部分にもクランプ部分にもあることに何か理由があるのか?」ということについて解説してみます。
クランプ部分にパンニング機能が備わっている雲台と備わっていない雲台
いろいろな雲台を見ていると、クランプ部分にパンニング機能が備わっている雲台と備わっていない雲台が存在します。そして同じメーカーの同じモデルでもクランプ部分にパンニング機能が備わっている雲台と備わっていない雲台があります。
例えばLeofotoのLH-40LR+NP-50はクランプ部分にパンニング機能が無いタイプで、同じサイズのLeofoto LH-40R+NP-60はクランプ部分にパンニング機能のあるタイプです。
Photo via:https://leofoto.com/products.php?cateid=58
また、交換パーツとしてパンニング機能の備わったクランプが別売されていて、パンニング機能の備わっていないクランプからパンニング機能の備わったのクランプへ交換できたりします。
一見便利そうに見えるクランプ部分のパンニング機能ですが、普通に考えると、多くの雲台ではボトム部分にパンニング機能が備わっているので「わざわざクランプ部分にパンニング機能が必要なのかな?」などと考えてしまいます。
パンニング機能の位置の違いによる回転の違い
テスト1
設置条件
● 三脚部分で水平を出した状態
● クランプ部分でも水平を出した状態
パンニング条件
● クランプ部分にパンニング無しの雲台:ボトム部分でパンニング
● クランプ部分にパンニング有りの雲台:クランプ部分でパンニング
クランプにパンニング機能無し
クランプにパンニング機能有り
いずれもカメラの水平は保たれたままでパンニングさせることができました。
この結果を見ればクランプ部分にパンニング機能が備わっていても備わっていなくても違いはほとんど無いように思います。
テスト2
設置条件
● 三脚で水平を出さない状態
● クランプ部分で水平を出した状態
パンニング条件
● クランプ部分にパンニング無しの雲台:ボトム部分でパンニング
● クランプ部分にパンニング有りの雲台:クランプ部分でパンニング
クランプにパンニング機能無し
クランプにパンニング機能有り
三脚で水平を出さずにクランプ部分だけで水平を出した場合、クランプ部分ののパンニング機能が備わっていない雲台では、カメラをパンニングさせるとカメラの水平が出なくなってしまいます。
一方、クランプ部分にパンニング機能が備わった雲台の場合、カメラの水平が保たれた状態でカメラをパンニングさせることが出来ます。
このような違いが出てしまうのは、回転軸の違いがあるからです。
クランプ部分にパンニング機能が備わっていない雲台の場合は、回転軸は雲台のボトム部分の角度に対して垂直になります。つまり三脚で水平が出ていないと回転軸は地面に対して垂直ではなくなってしまいます。
一方、クランプ部分にパンニング機能が備わった雲台の場合、回転軸はクランプの角度に対して垂直になりますから、クランプ部分の水平を出すだけで、カメラの水平を維持したままパンニングさせることができるのです。
この回転軸の違いによってカメラをパンニングさせた時に違いが出るというわけです。
用途の違いで選択が変わる
カメラをパンニングさせて連続的に撮影する場面ではクランプ部分のパンニング機能は必須
動物などの動体を撮影する場合や、パノラマ撮影のように、カメラをパンニングさせて連続的に撮影する必要がある場合、カメラの水平が保たれた状態でパンニング出来ないといろいろと不都合な部分が出てくるようになります。
このように水平を維持したままでパンニングが必要とされる撮影をする場合には、クランプ部分にパンニング機能の備わった雲台を必要になるかと思います。
もちろん、クランプ部分にパンニング機能が備わっていない雲台でも、きっちりと三脚で水平を出したり、カメラを回転させる度に水平を出せば撮影できないこともないですが、屋外の不整地で撮影の度に水平を出すのは面倒なことですし、ノーパララックスポイントでセットして撮影するパノラマ写真の撮影などでは設定が破綻してしまうため対処しきれなくなります。
わざわざそんな苦労をするくらいなら、最初からクランプ部分にパンニング機能の備わった雲台を使用する方が良いということになります。
クランプ部分にパンニング機能が無くても良い撮影
クランプ部分にパンニング機能があれば便利なのは間違いありませんが、全ての撮影でその機能が必要なわけではありません。クランプ部分にパンニング機能が必要のない撮影もあります。
例えば、一般的な物撮りなどではカメラをパンニングさせながら連続して撮影することもないでしょうし、その都度水平を出すようなことをしても手間ではないでしょう。
どちらを選ぶかは用途次第
どうせ雲台を購入するのであれば、クランプ部分にパンニング機能が備わった雲台を選択すれば良いんじゃないかと思ったりもしますが、道具は用途で選ぶものだと思いますし、必要の無い機能が備わっていても無駄というような割り切った考え方が機材には必要かと思います。
多機能になればその分用途が増えて便利になるのは間違いがないですが、クランプ部分にパンニング機能が備わった雲台だと、クランプ部分にパンニングを固定するためのノブが増えます。可動部分が増えれば故障の可能性も高くなりますし、価格も高くなります。
一番の問題となるのは、操作部分にノブやツマミが一つ増えるだけでも操作する際に混乱しやすくなるという点です。操作部が一つでも増えれば操作ミスも必然的に多くなります。小さなストレスですが、必要のない機能のためにこのようなストレスを毎回感じるのは避けたいところです。
なので、機材や道具では必要のない機能は切り捨ててなるべくシンプルに考えた方が良いわけで、誰しもにとってクランプ部分にパンニング機能が備わっていることが正義というわけではありません。
そのような理由から、雲台にはクランプ部分にパンニング機能が備わっていないものと、備わっているものとがあるわけです。
雲台を選ぶ際に、クランプ部分にパンニング機能が備わった雲台にするかどうか悩んだ場合は、上記の性質を踏まえて必要か必要でないかで選ぶのが良いかと思います。
もし選択が間違っていたとしても、多くの雲台の場合はクランプ部だけの交換もできるので、とりあえずは好きな方を選んでみて、しっくりこないようであればクランプ部分を交換するなどすれば良いでしょう。